サステナビリティ
経営戦略となるSDGs
環境問題とビジネス
なぜ経営に環境問題対策が必要なのか?
経営と環境問題対策は、少し遠いもののように感じられるかもしれません。しかし、昨今の情勢から環境問題対策はビジネスの発展とも強く結びついており、重要な経営戦略の1つとなっています。
では、それはなぜなのでしょうか?
気候変動・災害と温室効果ガス
気候変動の現状と予測
温室効果ガスの中でも人類が最も多く輩出しているのがCO2であり、対策すべき重要な項目です。IPCC第6次評価報告書(2021)によると、すでに世界平均気温は工業化以前に比べ、1.09℃上昇しています。特にここ30年間の気温上昇ペースは急速で、さらにCO2濃度が増加した場合、2100年までに3.3~5.7℃もの気温上昇となると予想されています。
気温上昇は異常気象や海面上昇、居住可能地域の減少などさまざまな問題と紐づいており、CO2排出量を低く抑えるための対策を取れるか否かによって将来の気温上昇シナリオに大きな差が生まれます。
気候変動による災害
地球温暖化というと、気温が少し高くなるだけのように感じられるかもしれませんが、それによって発生する極端な気候や災害から「地球過熱化」とも呼ばれるようになってきました。
先に述べた通り、温暖化によって破壊的な台風の増加による災害発生、海水面上昇により住む場所を奪われる人々がでる、極端に高い気温による生産性の低下など様々な悪影響が発生すると予想されています。近年の台風やゲリラ豪雨の被害は記憶に新しいのではないでしょうか。2018年には世相を表す言葉として「災」が選ばれています。
近年国内で発生した自然災害
年/月 | 内容 | 災害状況 |
---|---|---|
2018年7月 | 豪雨(平成最悪の水害) | 一年を通じて降水量が少ない岡山で、100年に一度の大雨を観測堤防が決壊し真備町が水没 |
2018年8月 | 猛暑(歴史的最高気温を更新) | 埼玉県や岐阜県で、観測史上最高気温を観測、41度超え |
2018年9月 | 台風21号(平成最強レベル) | 台風21号が近畿地区へ上陸、最大瞬間風速47.4m/s関西国際空港の連絡橋にタンカーが衝突し空港が孤立 |
2019年8月 | 九州北部豪雨 | 長崎県から佐賀県、福岡県までの広い範囲にかけて、長時間にわたる線状降水帯による集中豪雨が発生、8月28日を中心として各地点で観測史上1位の記録を更新 |
2019年9月 | 台風15号 | 関東上陸時の勢力では過去最強クラスの台風 |
2019年10月 | 台風19号 | 関東地方や甲信地方、東北地方などで記録的な大雨となり、甚大な被害をもたらした |
2020年7月 | 令和2年7月豪雨 | 7月1日から3日にかけて静岡県や神奈川県を中心に大雨が降り、静岡県熱海市では土石流災害が発生 |
2021年8月 | 令和3年8月豪雨 | 九州、北陸、中国地方をはじめ各地で大雨が続き、27水系67河川が氾濫 |
国際的な取り組み
こうした事態を重く見て、国際的にも京都議定書やパリ協定をはじめとした、様々な協定や国際会議が開かれています。特にパリ協定は、当時テロが起きたばかりにもかかわらず、先進国だけでなく中国インド等の新興国・途上国を含む196の国と地域が参加しました。
地球環境問題に対する国際的な取り組み(1997年以降)
年 | 主な取り組み | 概要 |
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1997年 | 気候変動枠組条約締約国会議COP(京都)開催 | 「京都議定書」採択、先進国全体で90年比5%以上の温室効果ガスの削減(日本は6%目標) |
2000年 | 国際ミレニアム・サミット開催 | ミレニアム開発目標(MDGs)の採択 |
2005年 | 「京都議定書」発行 | ロシアの批准により発行、米国は見送り |
2010年 | 生物多様性条約締約国会議COP10開催 | 「名古屋議定書」、「愛知目標」採択 |
2015年 | 「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」採択 気候変動枠組条約締約国会議COP21(パリ)開催にて、「パリ協定」を採択 | 2030年までに実現すべき17目標(SDGs)を共有 先進国のみならず、途上国も含む温室効果ガスの削減のための2020年以降の国際的取り組みの枠組み |
2016年 | 「パリ協定」発行 | 二大排出国の米国と中国の批准により発行 |
2015年11月30日~12月12日の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21:フランスパリ)
途上国を含むすべての国が参加する2020年以降の新たな温暖化対策「パリ協定」が採択された。日米欧などの先進国に加え、中国、インドなどの新興国や途上国を含む196カ国・地域が参加する歴史的合意。
- 「2℃目標」
産業革命前からの気温上昇を2度より十分に低く抑える「2℃目標」を掲げたうえ、さらに1.5℃以内とより厳しい水準へ努力するとした。 - 「“ギガトンギャップ”」
しかし、パリ協定には各国があらかじめ提出した当面の自主的な削減目標を組み込んだが、すべて達成しても気温は3度近く上がると予想される。2度目標からはほど遠い(10億トン)。 - 「日本:2030年に13年比26%減。」
日本が提出した温室効果ガス削減目標は、経団連が産業界の自主目標を合計した。「野心的」(安倍晋三首相)と言うよりも実現性を重視した内容。 - 「グローバル・ストックテイク」
温室効果ガス削減目標の達成は義務付けられてはいない。代わりに各国は自主的に設定した目標を2023年から5年に一度国連に提出し、排出量の実績などについて検証を受け、改善が行われることで対策を強化していく仕組みとなっている。 - 「温室効果ガス排出量を実質ゼロに」
世界の温室効果ガス排出量を、21世紀後半に海洋や森林による吸収と同水準にまで減らし、実質的にゼロに抑えるとした。再生可能エネルギーの普及や、代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の回収・貯留(CCS)の実用化などが欠かせなくなる。2025年までは先進国が年間1000億ドルの拠出する。少なくとも55ヵ国が批准した上で、それらの国のGHG排出量が世界全体の55%に達して、30日後に発効。
投資家の投資判断基準
投資家も、投資先企業の環境問題への取り組みを重視しはじめています。環境変動が大きくなることで災害による被害拡大や生産性の低下が予想されています。投資家たちは、投資した企業がこういった環境問題の要因で縮小するのを望んでいません。そのため、長期的に高い生産性を保ち災害による被害額を抑えることに積極的な企業、つまり環境問題対策を行う企業は投資家に選ばれるのです。
上場していない企業にとっても、これは関係のない話ではありません。上場企業もまた、環境問題対策を行う企業をパートナーとして選ぶためです。逆に、環境問題対策を行わない企業は、投資家からも他の企業からも選ばれなくなっていくでしょう。こうした理由から、環境問題対策は重要な経営戦略なのです。
図には、環境問題対策のほか、企業の生産性やゆくすえを左右する企業統治(Governance)・社会(Social)が記されています。これら3つが各企業のESGを形作り、投資家の指標となっています。
求職者や消費者の
判断基準
これから新卒で採用するような若者世代にとって、環境問題やSDGsは義務教育で学習した内容であり、大きな関心事です。自分自身が就職する企業を選ぶ際の判断基準としても、企業のSDGsへの取り組みは意識される項目となりました。先の投資家の判断基準とも相まって、優秀な人材がSDGsにとりくむ企業に流れていく情勢となっています。
若年層をはじめ、そのほかの消費者も環境問題への関心を寄せる傾向が強くなってきています。価格が多少高くても、サステナビリティに配慮した商品の方を選ぶ消費者が増えています。環境保護に取り組むことで、顧客の信頼を得ることができ、ブランドイメージの向上も期待できます。
環境問題への取り組みは単なる社会的責任であるだけでなく、ビジネスの成功にも密接に関わっているのです。
排出量把握の必要性
環境問題への対策は急がれますが、まず優先的に取り組むべき課題を発見する際に重要なのがCO2排出量把握です。事業の本体でのCO2排出量把握により省エネルギー技術の導入や生産プロセスの改善が行われるほか、サプライチェーン全体の最適化、さらには従業員の意識改革も促進されます。排出量を知ることで、長期的な排出量抑制計画の作成が可能となるのです。
また、企業の情報開示に必要となるのも排出量の把握です。とりくみの開示は投資家や求職者・消費者などのステークホルダーからの信頼につながります。
アクト・エアは廃棄物処理の工程で、CO2排出量を極力抑えた方法を選択し、そのデータを共有することで皆様に貢献します。